02月19日(木)
タクシーで横に座るチクが、深刻な顔で電話中だ。相手は日本人みたい。
『どうしたの?』 『うん…。なんだか変な方向に話がいってるのよね…』

電話は大使館の関係者から。 要約すると、JICAのスタッフ(チク)が、自分の恋人をこの国に呼びたい理由で、何かアクションを起こしているらしいが?…というような事を言われたと。 …誤解だ。オレはバカンスでこの国に来ているだけだ! 電話を替わってもらいオレが話をする。そして冷静に、ここまでの経緯を伝える。

そういえば先日、所長と話をしたときも微妙な空気が流れた。 『仮に陶磁器スタッフをこの国に要請する事があるとしても、君を指名するような事はしない。普段通りの公募になるよ。』 …それは当然だろう。というか、そもそもオレは何も希望してはいないぞ?エチオピアにはバカンスで来ているのだ!口頭での伝達+勝手な想像=誤解の発生。このままだと…チクに迷惑がかかる。それはマズい。

シニアボランティアの有資格登録者である、というのもタイミングが悪かった(世界中のJICA事務所に伝達済みなのだ)。タイ語を覚えて、タイの田舎に住み、タイの陶磁器工場と密接な関係を作り…将来の量産拠点を作るという、いわゆるボランティア精神とかけ離れた(笑)野望のために受験したシニアボランティア。無条件でどこの国にでもいく、と言うほど積極的な気持ちはない。将来に自分の仕事に繋がる可能性、努力してマスターする価値のある言語かどうか?そして、それらの条件を無視できるとすれば、やっぱり報酬!シニアボランティアと長期専門家では(日本での積立金や住居費を含めて)4〜5倍の格差があるのだ!アムハラ語をマスターしても、あまり使い道はなさそうだし…。 大使と所長には改めて意志をお伝えすることに。

『私の考えです。シニアボランティアとしてこの国に来る気はありません。長期専門家なら、今すぐオッケーの返事をしますよ!』 …これで99%、エチオピアの話はなくなったかなぁ。 ちょっと惜しい気もするけど、これでいいのだ! 住むなら…なにより食事の美味しい国に限るもんね〜!


02月17日(火)
今回のエチオピア旅行は仕事抜き、完全なオフである。 ロッククライミングの途中で、ヘリから情報(ミッション)の入ったサングラスを打ち込まれたトム・クルーズのように休暇を邪魔される事もなく、のんびりとアフリカを満喫するはず……だった。

エチオピアに住んでいる、知人の転居パーティーに招待された。彼女に会うのは9年ぶりである。そこに来ていた人に自己紹介なぞしていると、ある日本人が『陶芸』というキーワードに鋭く反応して来た。質問に応じて、現在の状況やキャリアなどについて話す。社交辞令ではなく、真剣に興味を示してくれている様子。若くて優秀な女性に興味を持たれて悪い気はしない。調子にのって喋りまくりである。と、翌日、人づてに伝言が入る。

『タクさん、大使から面会の申し込みです!』 タイシ?誰だっけ?
『駐エチオピア日本大使ですよ!』 おお〜っ!でもwhy?悪い事はしていないし…?

エチオピア北部にある古都・ゴンダールに、女性だけで運営〜制作をしている陶工房があるらしい。そこを起点に世界に通用する陶磁器を発信したい。そのための指導者を探している…。長年、適任者が見つからず困っていたところ、ひょっこりオレがエチオピアにやってきた、という事らしい。

日本大使、である。 海外で暮らしていた人ならよくわかると思うが、在外日本人の最高権威である。 そう、簡単に会える方ではないのだ。でっかい家に住んでいるし…(大使公邸) 繰り返しになるが、完全なオフのつもりでやって来た。 ので、こんな服しか持って来ていない… オレは街行くオシャレなエチオピア人を捕まえ問いただす。 『君の、このイカしたスーツ、どこで買ったんだ?』

ミニバスを乗り継いで、やっとのことで目指す紳士服店にたどり着いた。 店の名前は『Ambassador(大使)』…シャレかよ…。 仕立ての悪さは流石としか言いようがない(笑)が、贅沢は言ってられない。 覚えたてのアムハラ語と英語のごちゃ混ぜで、とにかくスーツとネクタイ、シャツや革靴を買い揃えた。ポリエステル100%のネクタイなんて生まれて初めて。パンツはもちろんツータック(しか売ってない!)。裾直しなんて目分量である!日本の常識を持ち込んでは駄目、とはわかっているものの…。

面会当日、大使館の厳重なセキュリティを抜けて、大使のいる部屋へ。 オレは長髪に無精髭…ある意味、存在感のあるスーツ(笑)で、 ゲイジュツカっぽいぞ!大使が陶芸にこだわる理由、ここまでの経緯などを聞く。そしてこちらの意見を言う…。この計画が実現するとしたら大使館ではなく、国際協力機構(JICA)からの派遣になるだろう。 となると予算や待遇、諸事情からオレが本当に採用される確率は低いのではないか? この国では教育や水など、文化事業よりも優先されることが沢山控えているのだ。 が、望まれている事、期待されているというのは悪い気がしない。 大使は陶芸が大好きみたいだし、その思いは本当に熱かったなぁ…。

翌日はなんと、今度はJICAの所長とお話をする事に! 大使館とJICAには、微妙な緊張感がある様子…むむ。 日本政府がらみの両雄と面会するほど、オレが価値のある人間とは思わないが…とにかく、エチオピアにいる日本人の話題(トラブル?)の中心はオレなのだ。

ウワサの男である。。。


02月13日(金)
エチオピアにやってきた。 首都・アディスアベバは標高2400mもあるので、空気が薄い(気がする)。 どこまでも広がる青空に乾いた空気。夏の軽井沢みたいに爽やかな風がそよいで…なんだかいい国の予感。アフリカ大陸といえば怒濤のエジプトを想像してしまうので…街の静けさが不気味なくらいだ。タクシーの呼び込みもないし、怪しい自称ガイドもいない。ちょっと拍子抜けするくらい。 迎えに来てくれたチクと4ヶ月ぶりの再会。いつでも、どこにいても全然かわらない抜け感?が彼女の魅力である。近況報告をしながらタクシーに乗る。これだけ大きな街なのに、ほぼ中心部に空港があるのは助かるなぁ!

10分足らずで自宅に到着。有刺鉄線に守られた厳重なゲートには2人の門番。庭師のアブデラさんも出迎えに来てくれる。ブーゲンビリアが咲き誇り、綺麗に刈り込まれた芝生と2匹の犬…。東洋からやって来た小娘は、なんとも贅沢な環境で優雅な一人暮らしを謳歌している様子…。とにかく1ヶ月の居候、よろしくお願いします! 特に疲れもないし、ということで…荷物を下ろして、さっそく街に繰り出すことに。名物の生肉(牛)と“雑巾”の異名をとる悪評高きエチオピアの主食『インジェラ』に早速トライ! ん?美味いじゃん!生ビールとの相性も抜群〜

エチオピア料理、恐るに足らず!と言いたいところだったが……つづく。


02月10日(火)
今日からエチオピアです。仕事抜きの純粋なバカンスです!
帰国は3月10日。その頃日本は、もう春かな…。
下調べを何もしていなかったので、本屋に行ってガイドブックを探したが… 『地球の歩き方』も出ていない国だった。 (『東アフリカ』の中に、他の国と一緒に少しだけ載っていたが…)
アフリカだから暑い?高地だから寒い?食べ物はおいしい?何語?
まぁ…あんまり知らないほうが楽しめるかな…?
これから大使館でビザを受け取ってから(ギリギリ〜)空港へ。

とにかく、行ってきます〜


02月07日(土)
《蓮REN》は多分、湘南で最強の陶芸塾だったと思う。
海を遠望するアトリエは建築家・隈研吾氏の建物。3基の窯(電気/ガス)を備え、アジアンテイストで統一された調度品も趣味がいい。塾長の大出真里子さんは知性と美貌を兼ね備えた希有な方。トップモデルを引退してから年月が経った今でも、性別を問わず憧れている人も多いだろう。 そこに通う塾生たちのレベルも色々な意味でハンパじゃない。普通なら話をするチャンスもないであろうVIPな方々、日本中の陶芸教室で腕を磨いてきた強者たち、テレビや雑誌で見かける芸能関係の方、モデルの美女達… 主任講師としてプレッシャーや理不尽と戦いながらも…生徒さんやスタッフと過ごした日々は楽しく、かけがいのない時間だった。皆に惜しまれて引退できた事を、とても誇りに思っている。 教室の最終日、といっても生徒さんと全員に会えるでもなく…なんとなく離ればなれになってしまうのも惜しい気がして…。日を改め、塾生と講師たちで《お別れ懇親会》のような集まりをすることになった。場所はもちろん茅ヶ崎である。 製麦工場を改装して作った《MOKICHI FOODS GARDEN》は茅ヶ崎の駅裏にある素敵なレストラン/ベーカリーだ。高い天井には古い木の梁が迫力で、昔の大きな機械が店内や庭に鎮座している。古書を並べた壁にはレトロなソファ…古くて新しい場所だ。

ワタナベ君の電撃!結婚発表や、私の中途半端な合格ストーリー(笑)…懐かしいアトリエでの話で大盛り上がり!優しい店のスタッフの配慮で、追い出される事なく…予定を軽くオーバーして4時間超の大宴会となった。そのまま13人が卓袱堂2階の狭い我が家になだれ込み…名残惜しくも楽しい宴は延々と続いた。

陶芸教室の先生をする事…これが最初で最後かもしれない。 なんにしても、とてもいい経験だったなー。『先生』とは呼ばれていたものの…オレが習う事の方がよっぽど多かった人生の先輩方。これでお別れなんてことなく、keep in touchで末長いお付き合いをよろしくお願いします!

特に、私の個展の際にはぜひ……(笑)


02月04日(水)
昨年末で葉山の陶芸塾《蓮REN》の仕事を辞めた。 これからは自分の制作と茅ヶ崎の店舗だけで生計を立てることに。 長年の夢がようやく実現する!

が…自由の身になったとたん、放浪癖がムクムクと…。 悪魔のささやきに導かれ、シニア海外ボランティアの募集要項を見る。 おおっ、あるある陶磁器の要請が…。それも魅惑のタイから! タイ北部にある陶芸の里、ランパンという街。イイ感じである。 はにかみ顔の美女とすれ違い、タイ料理を食べる2年間。 熱帯雨林の湿った空気と香辛料の匂い。そこで陶芸をする贅沢… 日本にいるよりお金も貯まりそうだし、こんなタイミング二度とないし。 タイ語をマスターして、将来の仕事に繋げよう!計画がひろがる〜 妄想は衝動を引き起こし、たった1人枠の厳しい受験に…挑戦した。

1次試験はクリア。 そして昨日、2次試験合格者の受験番号がネットに発表された。

…ない。 10回見直したが、オレの番号はない。ガッカリである。 英語のテストはなかなか良かったはず。面接だって笑顔全開で頑張った(笑) 胃カメラの写真も完璧だったのにな〜 。製造業は超不景気だ。たった1人枠に全国の猛者が集まったか?

ガッカリしていたら翌朝、JICAから速達で封筒が。 不合格通知にしてはぶ厚すぎる。妙な胸騒ぎが…。

『有資格登録者合格』

なんだそりゃ?…とにかく調べてみる。 語学、技術、面接、健康などは十分に合格レベルだが、なぜか?今回のタイには行けない。つまり派遣先のない合格である。 情勢不安のタイで、要請そのものがなくなった可能性もある…。 今後、オレのプロフィルを世界中の国にばらまいて『こんな男いりまへんか〜』と売り込み、必要な機関や大学などからオファーがあれば、そこの国で2年間、仕事をする事になるらしい。微妙だ…微妙すぎる! 能力が認められたのは嬉しいが…いつ、どこの国の、どんな場所に行くかもわからないで待ち続けるのか!ジャマイカ?ケニア?マーシャル諸島? それも1年3ヶ月のうちに案件が見つからなければ、この話は打ち切りだという。 むむむ…微妙すぎる。 地球儀のルーレットみたいなスリルは楽しいが、これじゃ仕事にならん! どうするか、しばらく考えます…。やっぱり日本に残ろうかな…?